輪郭
わたしの恋人は、自分の輪郭をよくわかっている人なんだと思う
彼は自分の幸福をきちんと知っている
他人と自分の線引きが明確で、自分の幸福を真っ当に追求する
そういうところがわたしにはなくて、羨ましくて、ムカついて、愛おしい
鉄腕ダッシュを見ながら、イッテQを見ながら、めそめそ泣いたりする
笑っているんだけどなぜかめちゃくちゃに泣いていたりする
悲しいわけではなくて、なんだろうな、なんでもないんだよ
うすい布団に体を沈めながら丸めた毛布に抱きついて
赤ちゃんみたいに体を丸めて泣いたりする
言葉にできない不安とか、名のない感情に振り回されて、自分の輪郭がよくわからなくなる
ぼわっとぼやけて白いもくもくした何かになったみたいで消えてしまいそうな気持ち
なんかそんな小説があったようななかったような あったような
恋人といる時はあんなにはっきりしていたわたしの輪郭
撫でられるたびしっかりと自分がかたどられていく気がする
なのに今、世界に滲んでいきそうなわたしの輪郭
ずっと彼の隣にいたいと思うけれど、そうして自分の輪郭をなぞり続けるのは、愛にのめり込んでいくようでとても怖いことかもしれない