次の恋は、もう大丈夫
甘美な恋の端っこに人生は落ちていた
先月のはじめ、ふらりと入った飲食店でひとりの店員さんに連絡先を渡した
いつもそうなんだけど、わたしの恋は大体パッと見の雰囲気で始まる
前髪の長さ、トップスのサイズ、飲食なのに汚れていないスニーカー、見た目と裏腹に落ち着いた声
飲みに行った
わたしはずっと 女の子でいられた
階段の登り降り、オーダー、荷物 小さな全て徹底して紳士で、それは軽く引くほどの紳士で、でも浮かれてしまうくらい紳士だった
「あ、わたし女の子として甘やかされることを望んでもいいのかも」
酔っていたけれど、思えば相当キザなセリフも吐いていた
スリーピースのスーツとキザが三度の飯より好きなわたしにとって、天国のような時間で、でも目が覚めたら地獄になっていることもわかっていたんだけど
甘えていいですよ と、それも直接的でなく
そんなの生まれて初めて言われた でもずっと誰かに言って欲しかったんだと思う
甘えていいよと言われて初めて、許されてはじめて、誰かに寄りかかれるような気がしたの
誰かに甘やかされたい
思いきり、潰れるくらい抱きしめられたい
一晩中誰かの腕に包まれて眠りたい
わがままを言いたい
我慢なんかしないで悲しかったら助けてを、寂しかったら寂しいを言いたい
ずっとわかって目を瞑ってきた自分を突きつけられた気持ち
「人生変わりましたか?」と笑うひと
人生、変えられてしまった女
わたしはもっと甘えていいし、わたしはちゃんと愛されるべきだし、ロマンチックも優しさもドキドキもエロスも全部、求めていい
当たり前のことに気づいたら、身軽になった気がする
もう大丈夫だと少しずつ思えてきた もう大丈夫、わたしは自分のために何かを願ってもいい
全ての女の子も男の子も、誰かの腕の中で自由になったらいい